【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「…………」
「連絡係なんて、あなたがやりなさいよ。『蕾のマリアーナ』にふさわしい仕事だわ」

 艶々とした黒髪に、大きな青い瞳……。
 モーリーンはわたしとそっくりな顔を歪めてクスッと笑った。

 わたし達は双子の姉妹だ。黙っていれば区別が付かないと言われるほど、よく似ている。
 背丈も体格も一緒。けれど、着古しの服しか持っていないわたしとは違って、モーリーンはこの日のために新しく仕立てた服を着ていた。
 足首までの長さの黄色いスカートはおろしたての鮮やかさで、モーリーンを明るく美しく彩っていた。

『花のモーリーン、蕾のマリアーナ』

 それが、わたし達に付けられたあだ名。
 モーリーンは華やかで可愛らしい街の人気者。
 対して、わたしは地味で役立たずの『蕾ちゃん』。もう十八歳になったのに、まだ花が開かない。
 双子なのに、性格は全然違う。

「じゃあ、あとはお願いね」

 モーリーンは軽く手を振ると、長いスカートを翻し、さっさと歩いていった。
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