【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「こないだもお針子のところで、モーリーンの陰口を叩いていたそうじゃないの。モーリーンは散々あんたのことを守ってやっているのに」
「わたし、そんなこと……」

 近ごろ、こういうことが多い。
 身に覚えのないことがわたしのせいになっていたり、その悪さをモーリーンがかばったことになっていたり……。

「言い訳なんかしないでちょうだい。ほんと、昔はこんな子じゃなかったのに」
「マリアーナ、もう酌はいい。奥に引っこんでいろ」

 父さんが野良犬を追い払うように手を振った。
 お客さん達の視線もわたしを離れ、やがて再び聖女の話題に戻っていった。





 わたしは父さんの命令どおりその場から引っこんで、台所の奥にある食品庫に隠れた。

 泣いてもどうにもならないとわかってはいるけれど、涙がにじむのを止められない。でも、目を腫らして出ていったら、また怒られる。

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