【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 わたしがおずおずと口を挟むと、ふたりがそろってわたしのほうを向いた。「ひっ」と小さな叫び声が漏れる。
 国王陛下と王太子様、町娘のわたしには天の上の世界の人だ。畏れ多いし、恐ろしい。

 でも。今こそ言わなければ。
 わたしの想いを。

「まず……申し訳ないのですが、陛下、わたしの腕を離してください」

 陛下がわたしをじっと見つめて、手を下ろす。とりあえず言うことを聞いてくれてほっとした。

「どうかわたしの話を聞いてください。……わたしは、本当は聖女になんかなりたくなかった。でも、陛下とこの話をするために、聖女として国に戻ることを決意しました」
「あなたは聖女になりたかったのではないのか?」

 驚いたように言う陛下に王太子様も同意するようにうなずき、鋭い目でわたしを見た。

「聖女にも、神殿にも王宮にも、興味はありません。わたしは平凡な町娘のままでよかった。ただなりゆきで聖女になってしまいました。そして……聖女の存在がどういうものかということを学びました」
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