【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「聖女とは女神レクトマリアの加護を為政者に与える者だ」
「はい……。だけど、それでいいのでしょうか」
「どういうことだ」

 わたしは拙い言葉を一生懸命つなげて、陛下と王太子様に話した。

 ――一人の女性が自分の気持ちとはなんの関係もなく、国王に操を捧げる。女神の加護を為政者に移すためだけに。
 そして、初夜の儀を経て女神の加護を失い普通の女性に戻っても、元の暮らしには戻れない。聖女は聖女で在りつづけなければならない。
 この国は、そういう聖女達の連綿とした犠牲の上に成り立ってきた。

「この国は、本当にそれでいいのでしょうか……」
「国で最も尊い女性となり、王族と並ぶほど豊かな暮らしを送り、国を治める王に寵愛される。すべてが思いのままになるというのに、何が不満なのだ」
「……本当にそうですか? 先代の聖女様もそうでしたか?」
「…………」
「そういう方もいるかもしれません。でも、それは聖女本人には選べないこと。人によってはとてもつらいことかも」
< 159 / 294 >

この作品をシェア

pagetop