【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 体調が元通りになってほっとした――けれど、立てない。寝台から下りて立とうとするけれど、膝が崩れてしまう。

「無理するな」

 ヴォルフが笑って抱きあげてくれた。





 身支度をしてテラスに出ると、昨夜は見えなかった湖を木々の向こうに望むことができた。
 水面が朝の光にキラキラと輝いている。

「綺麗……」

 机と椅子が出されていて、ヴォルフが下から朝食を持ってきてくれた。

「ありがとう。下に食料庫があるの?」
「まだ簡単なものだけどな」

 果物と固焼きパンと冷たい湧き水。
 かまどができたらパンを焼こう。鶏を飼って、卵を採るのもいいかもしれない。

「楽しそうだな」
「うん、いろいろ楽しみ。ねぇ、ヴォルフ、どうしてわたしがこうしたいってわかったの?」
「こうしたい?」
「昨日テラスを見た時に、ここでお茶がしたいなって思ったの」

 ヴォルフはとろけそうな笑みを浮かべた。

「俺もそうしたかったからだと思う」

 並んだ椅子に腰かけたヴォルフが、わたしの体を引き寄せ口づける。

「ん……っ」

 昨夜の快感を思い出して小さな声が出てしまった。
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