【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「この国では聖女は常にひとりしかいないと言われているらしい。そうだな、マリアーナ?」
「え、ええ。先代の聖女が亡くなると、新たな聖女が選ばれて……。国を豊かにし、国民が安定した暮らしを送るために、聖女の初夜権は国王陛下が有すると教わりました」
「女神の加護のために?」
「聖女だけが持っている女神の加護を国王陛下に差しあげるために」

 白い玉は空中で停止し、ぴくりとも動かなくなった。

『…………』
「……聖女、いやすべての乙女か。乙女が男に加護を与えるという仕組みを作ったのはいつだ?」
『……ずっと前。もう覚えていないけど……かなり前ね。数百年? もっとかしら』
「その間、実際にどんな状態になっているか、下界を確かめてみたことはあるのか?」
『……ない』
「神々にとっては一瞬でも人間には長い歳月だ」

 神あるある、だな……とヴォルフがちょっと疲れたようにつぶやいた。

「時代とともに女神の加護が薄れていった可能性もある。初めは誰もが持っていた奇跡だったのかもしれない。だが、今ではそれはただひとり、聖女と呼ばれる女だけのものになった」
『…………』
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