【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 家に着く頃には空がうっすらと淡く赤みを帯びてきていた。
 まだ十分に明るいけれど、これからあっという間に日が暮れるだろう。

「腹は減ったか?」
「ううん、まだ空かない」
「…………」
「ヴォルフは?」
「飯は……食料庫から部屋に上げておく。水瓶も」
「え?」

 ヴォルフが真剣な表情でこちらを見ていた。凄くおなかが空いているような顔をしている。

「腹が減ったら、いつでも食べられるようにしておく。だから……もういいか?」
「ヴォルフはおなか減っているんじゃないの?」

 ヴォルフの金色の瞳がすっと細められた。

「……飢えてる。おまえが喰いたくて、気が狂いそうだ」



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