【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 なんとお相手は幼馴染みのご令嬢!
 ふたりは幼いころから愛を育んでいたのだけれど、ご令嬢のほうがいずれ聖女を『第二の妻』とする王太子との婚約を断っていたらしい。

 王太子様、わたしに「私の聖女になってほしい。私とともに、国を支えてもらえないだろうか」なんて迫っておきながら、本当は心に純愛を秘めていたのかしら。





「それでは、聖女様……マリアーナ様、どうぞ御使い様とお幸せに」
「ありがとうございます……。皆さんもお元気で」

 夜が更けたころ、月の光に照らされた神殿のお茶会は終わった。
 聖宮の庭でお別れの挨拶をする。ジャネリーさんも他の女性神官も涙を浮かべながら見送ってくれた。

 繊細な彫刻のほどこされた美しい聖宮を見上げる。
 短い間だけれど、わたしも暮らした代々の聖女の館。
 国のため国王に処女を捧げ、人を愛することも家族を作ることも許されず、ただ独りで国民の幸せを祈りつづけた歴代の聖女達。その想いが詰まった孤独の城。

 もう、ここに来ることはないだろう。

「女神様の祝福が皆さんとともにありますように……」



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