【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「キュン、キュフーン」
「キュフーン!」

 あらあら、急に双子が泣き出した。

「うわっ、泣いてしまいました。どうしたら!?」
「レオンの顔が怖かったんじゃないか?」
「……む?」

 焦った様子でお互いをつつきあう三人を横目に、わたしは仔狼――灰色の毛並みのグラウと黒い毛並みのナハトを両腕に抱きあげた。
 赤ちゃん達はわたしの胸に鼻先をこすりつけ、すぐに泣きやむ。

「大丈夫ですよ。少しさみしくなっちゃったみたい」

 わたしの腕の中でお互いを毛づくろいしあうちっちゃな仔狼達が愛おしい。
 グラウとナハトをゆらゆらと揺らしてあやしていると、ヴォルフが昼食を持って戻ってきた。
 襟足をゆるく一つに縛った明るい銀の髪に、強く輝く金色の瞳。背が高くてたくましい美丈夫は両手に大きなお盆をかかげている。

「マリアーナ、待たせたな。腹減っただろ?」
「減った減った!」
「遅いですよ、ヴォルフ」
「おまえらのために用意したんじゃねえよ」

 憎まれ口を叩くけれど、ヴォルフの持っているお盆にはパンやチーズ、焼いた肉や採れたての木の実がどっさりのっている。五人分以上ありそう。
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