【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「で、なんだって? 聖女降誕祭?」

 話が長くなりそうだと先に昼食を用意してくれたヴォルフが、話題を元に戻した。ルナールが金髪をかきあげながら答える。

「そうなんだよ。少し前にさ、僕、あの街の近くまで行ったんだ。マリアーナの生まれ故郷だっていうからちょっと気になって立ち寄ったら、今度のマリアーナの誕生日にお祭りをするんだって。結構盛大にやるらしいよ。全国から人が来るって言ってた」
「俺のマリアーナを馬鹿にして下に見ていたやつらが、なんで誕生日を祝うんだ」
「知らないよ、人間のすることなんて」

 むっとした顔のヴォルフに向かって肩をすくめたルナールは、ティグリスやレオンと競争するように肉にかぶりついた。

「マリアーナは意味がわかるか?」
「そうねえ……」

 うとうとしはじめた子供達を敷き物の上におろして丸いおなかをぽんぽんと優しくたたくと、すぐに寝入ってしまった。赤ちゃんは寝るのと泣くのが仕事だというけれど、本当にそのとおりだ。

 そして、大好きな赤い木の実をつまみながら考える。
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