【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 両親の姿を探してヴォルフと一緒に裏口へ回ると、狭い裏庭でふたりが休憩していた。記憶よりもずいぶんと老けている気がする。
 街路樹の陰からのぞくと、話が聞こえてきた。

「今日はあの子達の誕生日だわ」
「ああ」
「元気でいるのかしら……」

 母さんのため息。父さんはぼんやりと空を見つめている。

「モーリーンのいる北方は、もう雪が降っているころかねえ」
「そうだな」

 神官として国のはずれの北方神殿へと赴任したモーリーンがこの街に帰ってくることは二度とない。
 ヴォルフと結婚し人の世から離れ、ヴォルフの眷属となったわたしも、もう両親と会うつもりはない。万が一ヴォルフや女神様のことが国民に知られたら、みんなに大きな迷惑をかけてしまうからだ。わたしのことは女神様の身許に行ったと思ってもらうしかない。

「まさかモーリーンのほうがマリアーナをいじめていたなんてね……。わたしはちっとも気がつかなかったよ」

 母さん、いつ知ったの? モーリーンが王都から北方神殿に旅立つ前に一度会ったらしいから、その時のモーリーンの様子から察したのかしら。
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