【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 ヴォルフも驚いたようにつぶやいた。

「マリアーナが絵の中にいる」

 絵を売っている中年の店主が苦笑した。

「そうだ、聖女マリアーナ様の肖像画だよ。マリアーナ様のお姿は言い伝えからの想像だけどね。うまく描けているだろう?」
「あんたが描いたのか?」
「ああ。これでも絵描きなんだ。以前は街の名所を描いて巡礼者に売っていたんだが、やっぱり聖女様が人気でね」

 この街には比較的大きな神殿がある。安産や子授かりにご利益があると噂されているようで、周辺の町や村からの巡礼者が多い。

「どうして巡礼者が聖女の絵を買っていくんだ?」

 ヴォルフは女神レクトマリアの眷属神であり、どちらかというと祀られる側。
 当然お守りを身につけたこともないし、神殿で祈りを捧げた経験もなく、実感がわかないのだろう。不思議そうな顔だ。

「熱心に女神レクトマリアを信仰している人たちの心のよりどころなんだよ。あと、聖女様の姿絵を飾っておくと、赤子を授かりやすくなるんだそうだ」
「へぇ。まぁ、人間たちの営みは女神の力になるからな。どんどん励めばいいさ」
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