【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「ちょっと待ってて。適当なのがあるから、今持ってくるわ」

 あたしと同じ寸法の古着、という注文にぴったりなマリアーナの服を何着か渡すと、男はすべて買い取った。
 まあ、不要品が高く売れてよかったわ。

 それにしても、見れば見るほどかっこいい。なんて美形なのかしら……。

「あたし、この店の娘なの」
「……そうか」
「この街は初めて? もしよければご案内しましょうか」

『蕾のマリアーナ』のことはいったん忘れて、思いっきり可愛らしく微笑み、上目遣いで男を見上げる。
 大体の男はこれであたしを意識するようになる。

「急いでいる」
「そう? じゃあ、ぜひまたお店に寄ってね」
「…………」
「あたしはモーリ……マリアーナよ。あなたは?」

 男は無表情な顔で、吐き捨てるように言った。

「……ヴォルフ」

 かさばる荷物を軽々と抱えて去っていく。振り返りもしない。

 これもハズレかあ。
 あたしに好意を持たないなんて、変わってる。
 でも、初めてをあげるなら、こんなかっこいい人がいいな。





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