【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「クゥーン?」

 気に入った?

 ヴォルフが聞いてきたので、うんうんとうなずいた。

「素晴らしいところね」
「クフン」

 ちょっと自慢げだ。可愛い。

「お気に入りの場所を紹介してくれたの? ありがとう、ヴォルフ」
「クゥン!」

 湖面を渡る風を感じながら歩いていくと、湖に流れこむ小川があった。
 小川と、川の水が流れこんでいる湖の一部が、白く濁っている。もやもやと少し変わった匂いのする湯気が立っていた。

「これは……温泉?」

 ヴォルフの背中から下ろしてもらって、川の水に手をつける。

「熱っ」

 何気なくさわったら、結構熱かった。
 広い湯船に移したら、ちょうどいい温度になるんじゃないかしら。

「でも、残念。湯船はないものね。お風呂に入りたかったなあ」
「キューン?」

 ヴォルフが首を傾げている。

「大丈夫よ。手ぬぐいをひたして体を拭けば気持ちいいわ」
「クン!」

 また、ヴォルフが何か閃いた顔をした。
 ヴォルフはやや上流の浅瀬に移動すると、突然前脚で川底の砂を掻き出しはじめた。

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