【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「え、ヴォルフ!?」

 熱いお湯を撒き散らし、凄い勢いで掘っている。
 ヴォルフの脚が浸かるくらいの深さまで掘ると、川岸に上がってきてブルルと体を震わせた。

「きゃあ!」

 思いっきり飛沫が飛んでくる。

「クフン」
「もう、ヴォルフったら」

 笑いながらヴォルフに近寄ると、ヴォルフが掘っていた川が見えた。
 ああ、なるほど。

「湯船を作ってくれたのね? ヴォルフ、ありがとう!」
「クフン、クフン」
「でも……これじゃ、今日は入れないわね」

 川の水は掘り出された泥で茶色く濁り、落ち葉や細い木の枝が散乱して、ちょっと酷い状態だ。

「……キューン……」

 ヴォルフがしょぼんと耳を伏せた。
 大きな体を小さく縮めている姿もまた愛嬌があって、愛しさが胸にあふれた。

「ヴォルフ、明日になれば、川の水も落ち着くわ。そしたら一緒に入りましょう?」

 ヴォルフの頭を抱きしめて、なでなでする。

「クゥ――ン!」

 また興奮したヴォルフがのしかかってきて、わたしを舐めはじめた。
 今度は『待て』はしなかった。



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