【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 慌てて手ぬぐいで体を覆い、お湯の中に飛びこむ。

「なっ、なんでこっちに来るんだ!?」
「だ、だって、白いのがいいからっ」

 白いお湯の中のほうが、肌が見えなくていいかと思ったのだ。
 涙目になって、男を見上げる。

「ぐっ……」

 その瞬間、恐ろしいほどの美形は鼻血を噴いて倒れたのだった。





「は、鼻血、大丈夫?」

 わたしに背中を向けて、お湯に浸かる美形。
 びくっと後ろ姿が震える。
 その怯えた動きが母親に叱られた街の男の子達のように見えて、つい子供をあやすような声を出してしまった。

「こ、怖くないわよ、何もしないから」
「それは、こっちの台詞だ!」

 美形さんがガバッとこちらを振り返って、また慌てて向こうを向く。

「…………」
「…………」
「あの」
「俺は」

 声が重なってしまった……。

「…………」
「…………」
「どうぞ……」
「……ああ」

 美形さんは一つ息を吐く、ゆっくりと振り返って、わたしのほうを見た。
 微妙に目線がずれているような気もするけど。

「……こっちの格好じゃないと、狭くて一緒に入れないから。驚かせて悪かった」
「え?」
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