【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 もふもふした狼じゃないのに、すねて肩を落とした姿が可愛すぎる。

「隠してたわけじゃないんだ。マリアーナが、もふもふが好きだって言ってたから」

 ぶっきらぼうな低い声。
「キューン」と落ちこんだ鳴き声がどこからか聞こえてくるくらい、うなだれている。

「だから、できるだけ獣の姿でいようと思ってたんだけど……、俺、お湯に浸かるの初めてで。一緒に湯浴みがしたくて」

 大人の男のひとで、凄くかっこいいのに、性格は狼のヴォルフのまま。
 だけど、胸がどきどきする。

「ごめんね、ヴォルフ。わたし、驚いてしまって」

 なんだろう、この胸の高鳴り。
 ヴォルフが可愛いから……?

「狼の姿はもちろん好きだけど、もふもふだから好きなんじゃないの。……ヴォルフだから、好きなの」
「マリアーナ……本当?」
「うん。大好きだから、ずっと一緒にいたいの」
「マリアーナ!」

 突然ヴォルフが飛びかかってきた。

「わっ!」

 でも、狼の時みたいに押し倒されたりはせず、二本の腕でギューッと強く抱きしめられる。

「マリアーナ、俺も好きだ」

 そして、ふうっとため息を吐く。

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