【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「俺を手当てするマリアーナが一生懸命で可愛くて。だけど、俺が舐めると急に色っぽくなって。かと思えば、突然いなくなってしまいそうな儚さがあって……」

 すぐ夢中になった――低くかすれた甘い声が、耳もとでささやく。

「ヴォルフ……」

 体にぞくぞくした痺れが走った。
 なんだろう、これ。
 ヴォルフに抱き着きたくてたまらない。

「あの時の耳のかすり傷は、魔獣を退治していたからなんだ」
「……魔獣!? でも、女神様の護りがあるから、神殿の森には魔獣は近づかないって」
「ああ。ただ最近女神の影響力が薄れていて、普段は守護されているようなところに、突然強力な魔獣が現れた。それで俺が出ることになった」
「女神様のお力が弱まったのは、先代の聖女様が亡くなったから?」
「それだけじゃない気がするが……」

 ヴォルフはくんくんとわたしの匂いを嗅いだ。

「ひゃっ……」

 ヴォルフの息を素肌に感じて、また胸が締めつけられる。けれど、さっきみたいな苦しさはなくて、とくん、とくんと、ときめきで胸が躍る。

「あー、いい匂い」

 わたしの鼓動は気づかれなかったみたいで、ヴォルフはそのまま話を続けた。

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