【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「俺はもっとマリアーナといたかったのに、急に女神に呼び戻されて、何かと思ったらマリアーナの話を聞きたがって」
「わたしの……」
「俺が最初にマリアーナを見た時、どう思ったかとか、これからどう接近するつもりかとか、根掘り葉掘り」
「ねほりはほり」

 女神様の心象が少し変わってきた。意外と親しみやすい方なのかしら……。

「今回もさ、マリアーナと旅に出るんだとついこぼしたら、『人間の女には必要なものがいろいろあるのよ~』とか言って買い物に行かされるし。あいつ、俺が右往左往するのを楽しんでやがる」

 旅の準備がやけに万端だったのは、女神様のおかげだったのね。

「女神様に感謝しなくちゃ。わたしなんかを気にかけてくださって」
「気にすんな。大神は気まぐれだ。その意図を考えてもキリがない」
「そっか……」

 体をひねって、ヴォルフの瞳を覗きこむ。
 蜂蜜みたいに甘くとろけた黄金色の目が、わたしを優しく見つめていた。

「あなたと離れなくてもいいのなら、なんでもいい」
「マリアーナ……」

 そっと近づいてきた唇を、目を閉じて迎え入れる。
 花の蕾がほころぶように幸福が体からあふれ出した気がした。



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