【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 聖なる水晶が国中の神殿を巡り終えるまで、数年かかるそうだ。

「まぶしいなあ……」

 この東方神殿でもとても立派に見えるのに、王都の大神殿はさらに壮麗なのだと言う。わたしは街から出たことがないので、話に聞いただけだけれど。

「わぁ」

 神殿の前には、儀式や祭りの際に人々が集まる広い庭があり、中央に設けられた祭壇に大きな水晶玉が鎮座していた。

「あれが、聖なる水晶……」

 人の顔ほどの大きさの水晶を取り巻いて、たくさんの少女達が列を作っている。
 少女が一人ずつ水晶の前に立ち、神官が何かを唱えると、水晶はぼんやりとさまざまな色に光った。

「……でもね、最近女神様が……」
「お力が……」

 順番を待つ比較的年嵩の女性達がヒソヒソと話しているのを、わたしは最後尾に並んでなんとなく聞いていた。

「ほら、お天気が荒れ模様だし……」
「そうそう……」
「……結婚しても、なかなか子宝に恵まれないって」

 大陸には十二の国があり、それぞれ守護する神が違うのだと、街の学び舎で教わった。
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