【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 あまりにヴォルフが力説するから、おかしくて笑ってしまう。
 男の子がすねたように口を尖らせた。

「ちぇっ、やっぱり恋人じゃないか。イチャイチャしてんじゃねーよ」
「こら!」

 またお母さんに怒られてる。
「べーっ」と舌を出して、屋台に戻る様子がやんちゃで微笑ましい。

「うちの子がごめんよ。あんた達、古着屋で服買ってたろ。美男美女の二人連れがいるって、話題になってたんだよ」
「美男美女?」
「美女だろ。あ、美少女かもしれない……」

 わたしの顔を凝視してうんうん悩みはじめるヴォルフに、女将さんが突っこみを入れた。

「潔いほどベタ惚れだねえ! まあ、嫁を大事にするのはいいことさ。ところでさ、あんた達、どこから来たの?」
「仕事をしながら旅してるんだ」

 よ、嫁……!?

 ドキッとして真っ赤になってしまったわたしを置いて、女将さんとヴォルフが話しはじめていた。

「そのかんじは商人じゃないね? じゃあ、冒険者や傭兵みたいなものかね」
「まあ、そんなもんだ」

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