【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「はいよ、ありがとうね。裏に座るところがあるから、どうぞ」

 いくつかの屋台で共同で使っているのか、家並みと屋台の間の道端に椅子が数脚並んでいた。
 並んで腰かけて「なかなかいける」「おいしいね」なんて言いあいながら、お昼を食べる幸せ。

「二人は恋人同士なの?」

 屋台から顔をのぞかせて、男の子が話しかけてくる。

「恋人? 違うわよ」
「違うんだ! じゃあ、おねえさん、俺のお嫁さんになってよ」
「ええ?」
「おねえさん凄く綺麗だし、笑った顔が可愛い」
「まあ、ありがとう」
「駄目だ!」

 頬張っていた肉を飲みこんだヴォルフが、大声で威嚇する。
 子供相手に、結構真面目に怒ってない?

「ヴォルフ、子供の冗談なんだから、真剣にならないで」
「子供だって本気になるさ。マリアーナは自分がどれだけ人目をひくか、わかってない」
「そんな、人目をひいてるのはヴォルフでしょう?」
「俺?」
「道行く女性達がみんなヴォルフのことを噂していたわ」
「男どもはみんなマリアーナを見てたぞ。マリアーナが美人で可憐で愛らしすぎるから……」
「ヴォルフったら」

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