【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 滝の裏には洞窟があり、その入口でヴォルフはわたしを下ろしてくれた。

「クゥン」
「……こんな世界があるのね」

 激しい水流のカーテンに閉ざされた空間は薄暗いけれど、あちこちに日差しが差しこんで水飛沫が輝いて見える。
 大きな水音で耳が潰れそうだ。

「まだ奥があるの?」

 曲がりくねった暗い洞穴を奥に進むと、滝の轟音も少しマシになってきた。
 何度目かの角を折れると、やや開けた場所があった。
 どこからか細く光が差しこんでいる。洞窟の壁がきらきらと光る様はとても幻想的で、神聖な空気すら漂っているようだった。

「ここは?」

 安心していいと言わんばかりに、白銀色の狼がごろりと横になる。

「あなたの秘密の隠れ家のひとつ、なのかしら」

 わたしもマントを外して、その巨体に寄りかかって座りこんだ。

「ヴォルフのおなかのもふもふ、気持ちいい」
「キューン」
「ヴォルフ、綺麗なものを見せてくれてありがとう」

 ヴォルフがわたしの頬を舐める。
 何に追われていたのかわからないけれど、ちょっと日常が戻ってきたようでホッとした。





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