【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 激しい勢いで雷のような音を立て、水が流れ落ちていた。
 幅はそれほど広くないけれど、落差が大きい。滝のてっぺんを見上げると、首が痛くなる。王宮の塔より高そうだった。

「凄い! わたし、こんなの初めて見た」

 こんな時だけれど、感動して声を上げてしまった。

「クゥン」

 そうだろ、とヴォルフが言った。
 大きな岩の上で荷物を下ろし、わたしに差し出す。

「なに?」

 荷物を開けて中身を確認していると、ヴォルフがマントを鼻で指した。雨具にもなる、フードの付いたマントだ。

「これを着ればいいの?」
「クン」

 雨が降っているわけではないのに、なぜだろう?
 あ、もしかして……。

「クーン!」

 正解とヴォルフが吠え、急げと体を伏せた。慌ててマントを身に着け、ヴォルフに飛び乗る。
 ヴォルフが岩をいくつか足場にして、勢いよく跳躍した。
 強い風が巻き起こり、流れ落ちる滝の水が一瞬大きく舞いあがる。その中をくぐり抜けるように、滝の中に飛びこんだ。

「わあ……」

 わたし達はあっという間に滝の裏側にいた。
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