【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 白銀色の長い髪がぼんやりと発光している。月光のようで、とても美しかった。

「なんの用だ。呼んだ覚えはないぞ」

 わたしではなく光の玉に向かって、厳しい声で問いかける。その口調は、光の正体が何かを知っているみたいだった。
 光がさらに強く点滅した。

『呼んでくれてもいいのよ? 遠慮しないで』

 え……光の玉がしゃべった?

 白い光が明るくなったり、暗くなったりする。その明滅に合わせて、頭の中に声が響いてくる。
 それと同時に重いものに圧迫されるようなかんじがして、息苦しくて声が出なくなった。

「神力を放出するな。マリアーナが怖がるだろう」
『あら、ごめんなさい。水晶の幻影は、調節が難しくてね……』

 白い玉の発する光がぐっと弱まり、ようやく息を吐くことができた。
 止まっていた考えが回りはじめる。

 ……水晶の幻影?
 まさか本当に、聖なる水晶なの?

『聖なる水晶は、わたくしの小さな現身。これはその幻。わたくしの欠片をこの世に送るための影』

 光は、わたしの心中の疑問に答えているようだ。
 わたしの心を読んでいるのかもしれない。

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