【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
『悪あがきねえ。もう人の子は気づいたわ。聖女が聖女ではないことに』

 聖女が聖女ではない……?
 わたしが聖女じゃないのはその通りなんだけど、聖女が聖女ではないってどういうこと?

『逃げるだけでは守れない。マリアーナちゃん自身が強くならないと、ね』
「…………」
『あら、もう時間。この影はそろそろ限界ねぇ。消滅する前に、ひとつ忠告しておくわ。聖なる水晶の本体が近くまで来ているわよ。いずれにしても、心を決めるなら早くなさい』

 宙に浮いていた光の玉が一瞬強く輝いたかと思うと、パッと四方に散って消えた。





 * * * * *





 しばらく呆然としていたわたしが我を取り戻したのは、ヴォルフがわたしをぎゅうっと強く抱きしめたからだった。

「…………」
「ねぇ、ヴォルフ、教えて」
「…………」
「女神様のおっしゃっていたことは、いったいなんなの?」

 ヴォルフのあたたかい腕の中で、その整った顔を見上げる。彼は苦しそうに眉をしかめて、目を閉じていた。

「……マリアーナが知らなくてもいいことだ」
「本当に?」

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