【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 女神様は、逃げるだけでは守れないとおっしゃった。わたし自身が強くならなければいけないと。

 今の状況はどうだろう。
 わたしは国を、故郷を捨てて旅に出た。なんの憂いもない、幸せな日々。それはすべてヴォルフが守ってくれているからだ。

 ……でも。

「わたしも、ヴォルフを守りたい」
「マリアーナ」
「あなたにそんな顔してほしくない」
「マリアーナがいれば、俺はそれだけでいいんだ」
「……わたしね、妹のモーリーンと比べて出来が悪くて、『花のモーリーン、蕾のマリアーナ』なんて言われていて」

 ヴォルフと出逢う前の自分を思い出す。
 わたしは鈍臭くて、家族や友達、周囲の人々とうまく行かなかった。何をやっても裏目に出てしまって、いつも自分を責めていた。
 いつしか、そんな自分自身をあきらめていた。

「ずっと、わたしは何もできない駄目な子なんだと思って生きてきた」
「マリアーナ、それは」
「だけどね、ヴォルフと出逢って、わたしも変われるかもしれないと思えたの。わたしは何もかも捨てて、ヴォルフとともに生きるんだって決めた」
「マリアーナ……」
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