【完】それは確かにはちみつの味だった。


「ぴーちゃん先輩、やっぱり今日もいた」
「今日も来たの? 成瀬くんも相変わらずだね」

 するとその人物は「先輩も来ると思ってたから」と、そう言ってへにゃりと顔を緩ませる。

「はい、仕事を頑張っている先輩にご褒美」

 そして手渡されたのは無糖のカフェオレ。それは甘いものが苦手な私を知ってのチョイスだ。この男は昔から気遣いが出来る人間である。

 ありがとう、とお言葉に甘えて受け取ることにした。

「ちょっと休憩しようよ」
「君は何も仕事してないじゃん」

 「コレ飲み終わったら手伝うからさ」と彼は自分用に買っていたいちごオレを揺らす。彼は私と違って大の甘党だから、いつもいちごオレやはちみつレモンなどの甘ったるい飲み物を選ぶことが多いのだ。

 顔が十分甘い上に中身まで甘くなって、彼の将来が少しだけ心配になった。健康的な意味で。

 人の好みは自由だから別に良いのだが、それをおにぎりと一緒に飲み食いするのは今でも信じられない。



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