今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
朝ご飯を済ませ、支度を始めて服に迷うあたしに叶が言う。

「どれを着ても似合うよ」

初めてのイヴってことより、いつも何着ても、素敵すぎる叶の隣でせめて釣り合う自分でいたいだけ。

何しろ今日の叶はスーツ姿なのだ。前に古書関連の何かに出席するとかで初めて見た時。言い方はあれだけど、これが自分のものなんだとどれだけ優越感に浸ったことか。背も高くて、頭の大きさとか躰つきとかバランスも良いし、文句の付けどころが全くないし。

反対にあたしは歳より幼く見えるほうだし。叶に見合うような大人っぽい服が合わない現実はどうしようもない。

悩みに悩んで、格子柄のプリーツスカートに、上は首元ラインにビジューをあしらった黒のタートルニット。丈が短めのボレロ風ジャケットを羽織って、カジュアル過ぎずフォーマル過ぎないコーディネイトを捻り出した。

「可愛いよ。スズらしくて」

車の助手席に収まったあたしの額にキスをすると、目を細めるようにして叶は微笑んだ。

二人きりだとスズって呼ぶのはちょっと反則・・・。スマートにハンドルを握る横顔にうっとりと。夢見心地のシンデレラさながらに。

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