今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
眼差しは静かだった。口数が少ないのと、あまり笑わないのとで構えてしまいがちだけれど。このひと、嘘は言わない。気取られないぐらいの吐息を吐き、あたしは時雨の向かいに座った。

じっとこっちを見つめて彼が話し出す。自分と叶はビジネスパートナーなのだと。

「ずっと二人でやってきたから、どうかとも思ったけどな。叶があんたの分も責任取るって言うし、・・・あんたも離れる気ないみたいだし」

抽象的で捉えどころのない話の入り口に黙って耳を傾け。時雨は淡々と続ける。

「ビジネスっつっても“裏”だってことぐらい、気付いてんだろ?」

「・・・・・・」

「中身は知らなくていい。叶の希望なんでね」

「・・・じゃああたしは何を・・・?」

「いずれ分かるさ」

肩を竦めた時雨はあたしを探るように、目線を上から傾げた。

結局、肝心なところは蓋をされたまま。それでも自分の居る場所がどこなのかを改めて突き付けられ、かえって足が底に貼り付いたような。

「それまで忘れてればいいのね」

あたしは少し笑った。・・・笑えた。女って、開き直ってしまうと肝が据わってしまうものらしかった。 
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