夢花火降る

悪夢にゆられて

 誰もが現実では闘っている。


 言葉という名の武器を掲げて。


 でも、それで誰かが泣いてもいいのだろうか。傷つけても傷ついても――。




「あの子クラスの男子に色目つかってんの。ね、みんなで無視しない? 調子のってるよね家柄がよくてかわいいからってさあ、制裁はやっぱり必要だよね」



 誰もが被害者で、加害者。




 何が正しいかなんてわからなかった。たったそれだけで深く考えることを放棄し、そのまま流されるように従ったのが、悪夢と悲劇の始まりだった。なんて滑稽な結末だろうか。






 あの日、私は死んだ。





 しずかにゆられながら悪夢をみる。



 しずかに――しかしそれはいきなり騒音に変わる。




「うぉー見ろよ少年。でっかいくじら泳いでるぞ! あーくじらの刺し身食いてえ」

「おじさんうるさい。少しは静かにできないわけ?」

「あのぅ、寝てる方もいるので……」


「にゃにゃにゃー」




 にぎやかな会話に導かれるように目を覚ましたものの、目の前の光景に余計混乱してしまう。一体何があって、どうすればこんな状況になるのだろうか。きょとんとした様子の私に気づいた少年だったが、すぐ視線は車窓の方にそらされてしまう。



 すると真向かいに座っていた気弱そうな女の人がすみませんと、なぜか謝る。



「いえ……あのこれは一体――」


 しかし答えたのは別の人だった。

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