【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 ははは、とハロルドは楽しそうに笑った。

「そうか、仲がよくて微笑ましいな」

「兄上、また相談に乗っていただけますか?」

「うん、なんだい?」

「僕……アーリアを独り占めしたいのに、同時に見せびらかしたい気持ちもあって困っているのです」

「はは、気持ちはわかるよ。わたしもクリスティーナを独占したいし、自慢もしたい」

 クリスティーナというのは辺境伯の娘で、ハロルドの妻の名前だ。大恋愛の末に結ばれた二人の話は民草にも人気で、流行小説や芝居のネタにもなっているらしいけど……。

 ハロルドは温厚な笑顔で、ウンウンとうなずいた。

「早く結婚したいという気持ちはよくわかったよ」

「はあ……、今すぐにでも結婚したい」

「わたしも協力するが、実際問題としてある程度の日にちは必要だね。まぁ、それまでは我慢しなさい」

 セドリックはちょっと唇をとがらせて不満そうだったけれど、しぶしぶうなずいた。


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