【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「あ、あの、申し訳ございません! エドワード様こそ、お怪我はございませんか!?」

「私は大丈夫ですよ。これでも鍛えていますので」

「本当に、申し訳ございません……。ふぅ……、わたくし、突然本が落ちてきて驚きましたけれど……、助けていただいたこともびっくりしました。あの……ありがとうございました」

「落ち着いて。まだ動揺しているでしょう。深く呼吸をしてみてください」

「はい……」

 深呼吸をすると、バクバクしていた鼓動が少し収まってくる。
 わたしを腕の中にかばったまま、エドワードはクスリと笑った。

「妃殿下はお転婆なのですね」

「……え?」

「ノックをしても返事がないので、中をのぞいたら、妃殿下が本を取るために飛び上がっていました。非の打ちどころのない淑女だと噂に聞いておりましたので、意外でしたよ」

「お、お恥ずかしゅうございます……」

 うわぁ、運動音痴のジャンプを見られてしまったのね。淑女として、王子妃として、とんでもないところを……。
 顔が火照る。ああ、どうしよう。もう、貴婦人の仮面とか言っていられないわ。

「あの……あの、わたくし、幼いころは体が弱くて……領地でずっと療養しておりましたの。緑の多い場所で……その、体力をつけるために乗馬をしていたのですけれど、実は木登りなども大好きで……あっ」

 まずい、しゃべればしゃべるほど、淑女らしくなくなっていく。言い訳にもなってない!

< 87 / 113 >

この作品をシェア

pagetop