【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「これは失礼いたしました、妃殿下。……つっ」

 本があたった場所なのか、エドワードが肩を軽くまわして、少し顔をしかめた。

「肩が!? やっぱり痛めてしまいました……?」

 どうしよう、わたしのせいで怪我をさせてしまったのかしら。

 とっさに体を寄せて肩にふれようとした時、エドワードがふたたび腕を上げ、タイミングが合わなかったわたしは、その脇に飛びこむような状態になってしまった。

「あっ、ごめんなさい!」

「……大胆ですね」

「ち、違うのです。これは――」

 エドワードの腕が下りてきて、またわたしを抱きこんだ。「わかっていますよ」とつぶやきながらも、離してくれない。

「だが、たとえ無意識でも、あなたに好意をいだく男の腕に飛びこんでくるなんて……誤解されても仕方がないですよ?」

 エドワードの腕に、少し力が入った。わたしは呆然としたまま抱き寄せられてしまった。

 こ、好意!?
 いつからそんな流れになってたの!?

 体をくねらせて逃れようとするけれど、エドワードの腕は鋼のようでびくともしない。

「妃殿下……あなたは魅力的すぎる。このままだと、本気で止まれなくなりそうだ。……ご夫君とは違う、大人の男を知りたくありませんか?」

「エドワード様、おやめください」

 恥ずかしさに体が熱くなった。顔を思いきりそむけて、頬の赤みを隠す。

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