【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 わたしは、ふらふらとセドリックに近寄っていった。

「セドリック」

「アーリア……信じてくれるよね?」

 少しうるんだ瞳でわたしを見つめるセドリック。
 わたしはセドリックの横に立つと、わたしより少しだけ背の高いセドリックのあごを指で持ちあげ、唇を寄せた。

「な……!?」

 少女がぽかんとした顔で、セドリックにキスするわたしを見上げる。
 わたしはにっこりと微笑むと、彼女をそっと押しのけた。少女はびっくりしたのか、なんの抵抗なく後ろへ揺れ、おしりを床につけて座りこむ。

「アーリア」

 ようやく自由になったセドリックがわたしを抱き寄せ、ちゅっと口づけた。
 横目で見ると、女子生徒は呆然とわたしたちを見上げていた。

「その子にも……ほかの男子生徒にも、僕たちの愛は絶対だと教えてあげよう?」

「男子生徒……?」

 ――あ。

 そう言えば、テラスにはほかの男子生徒たちがいたじゃない!

< 98 / 113 >

この作品をシェア

pagetop