スペシャル企画 儚く甘い 番外編追加しました
「気をつけろ」
「うん。ありがとう」
病院からの帰り道。やっと家に戻れることに紗那はとても嬉しそうだった。

まだつわりで減ってしまった体重は戻っていない。
すっかり細くなってしまった紗那の手を握りながら、俺は紗那の足元に全集中してエスコートする。
紗那の表情は晴れやかだ。

「お腹すいちゃった」
紗那の言葉に俺は全身の力がみなぎる。
「そうか!?じゃあ、すぐに支度する。紗那は着替えてベッドに」
「大丈夫。すごく元気だから。お医者さんも無理しなければ大丈夫って」
「だめ。一歩も動くな。トイレに行くときも俺を呼べ」
「無理、それは。」
本気で嫌そうな顔をする紗那に笑いながら、俺は紗那を抱きしめた。
やっと、こうして抱きしめられる。この一か月、ベッドに横になったきりだった紗那。
こうして抱きしめられなかった日々は俺も実は不安だった。

「ありがとうね」
胸の中から聞こえる声に俺はだきしめたまま答える。
「俺の方こそ、ありがとう。愛してる。おかえり。」
「ただいま。愛してる。」
二人で抱きしめあいながら俺たちは今を抱きしめる。
この先どんな未来が待っているかはわからない。でも、今一緒にいる。
これからも、二人一緒にいる。

それだけで、当たりまえじゃなく、奇跡のような幸せだ。
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