ときめきの香りは貴方ですか?
「あの時・・・あの時、城崎さんが、アドバイスしてくれなかったら、ここにはいませんでした。なっちゃんとも龍太とも永富さんとも、皆さんと出会えなかった。きっと、学生の時から変わらないままで、大人になっていたと思います」

私は涙を堪えて、城崎さんに話続けた。

「ずっとお礼を言いたくて・・・あの時はありがとうございました」

城崎さんは、頭にやさしくポンポンと手を当てた。
「ただのきっかけで、風谷さんの実力だよ。ところでさ、さっき俺の名前出てないけど?」

私は顔が赤くなり、下を向いて、
「も、もちろん、城崎さんとも出会えなかった・・・」

私は、胸が高まる感覚も、体が痺れるような感覚も知らなかった。
こんなに胸が締め付けられるようにきゅっとなる感覚も・・・

「この香水、つけなくなったんですね」
「うん・・・俺は好きなんだけど、永富さん曰く、フェロモン出てるように女の子が寄ってくるから、止めろって」
「ふふっ、分かる気がします」
「風谷さんが振り向いて、寄ってきてくれるなら、毎日つけてくるよ」
「や、やめてください。他の女性が寄ってきます」
「えっ?」
「い、いえ、何でもないです」

城崎さんに会った頃は、クールな城崎さんは絶対違うと思ってた。
でも、今ならわかる。その優しさが・・・

あの日、この香水の香りでときめきを知った。
城崎さんに出逢って、どきどきを知った。
城崎さんに出逢って、私は恋を知った。
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