ときめきの香りは貴方ですか?
お母さんがダイニングの椅子を引いてくれて、優也さんと私は腰掛けた。

お父さんは黙ったままで、優也さんがようやく口を開いた。

「父さん、母さん。俺達、今一緒に住んでいて、いずれは愛里と結婚を考えている。それだけを伝えに来たんだ」

け、結婚!突然の告白に心臓が跳ね上がり、叫びそうになったのを我慢して、平常心を装った。

お父さんはまだ黙っている。
けんかをして、優也さんが出て行った。
それから顔を合わしても話をしないと言っていた。

2人があのイベントの時、探していたのは優也さんだ。
とても嬉しそうで、優しい顔をしていたのに。

「じゃあ、愛里帰ろうか」
優也さんが立ち上がろうとした時、私は優也さんの服を引っ張って止めた。
「愛里?」
「優也さん、座って下さい」

優也さんは何があったのかという顔で、もう一度腰掛けた。

「先日はお力になれず、すみません。お探しの人は優也さんだったんですね。」
お母さんはお父さんの顔を見て、何か言いたそうだった。

「あの時、私の答えを聞いて、喜んでいらっしゃいました。優也さんがご心配だったんですね」
私は話しながら、涙が溢れてきて、涙声で続けた。

「優也さんは、お父さんから成人式でプレゼントしてもらった・・・腕時計を修理しながら、今でも大事にしています」

私にとっても大切な思い出の腕時計。
胸が詰まる。
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