甘い毒に溺れ堕ちて
「また? どこ行くの」

「ショッピングモール。新しい服が欲しくて。それで……」

「お金が欲しいって?」

「う、うん。首元が黄ばんできたから。色も褪せてきたし……」



鋭い眼光に、徐々に声がしぼんでいく。


幼い子どもがいる前で、よくもまぁそんな不機嫌になれるな……。

ま、言い方がきついのはいつものことだし。むしろ機嫌がいい時のほうが珍しいし。



「で、いくら」

「っ、さ、3000円」



5000円と出そうになったところを直前で呑み込んだ。


お父さんからの臨時収入はまだ残っているから、1着も買えないほどではないのだけれど。

母は私のお小遣い事情を把握しているため、おねだりなしで買うと、見つかった際に怪しまれる恐れがある。


実際、髪を切った時も、怪訝な目で見られた。

『お年玉貯金を使った』と説明して、なんとか切り抜けられたものの……今も内心ヒヤヒヤしている。


もしバレたら……お金だけじゃなく、お父さんの優しさまで取り上げられてしまうかもしれないから。
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