甘い毒に溺れ堕ちて
「行かないで……」



再度鼓膜を響かせた声は、若干震えていた。


ねぇ藍くん、あなたは今、何を見ているの?


私を通して、一体誰を──誰と重ねているの?



「……行かないよ」

「ほんと?」

「ほんと」

「どこにも行かない?」

「どこにも行かない。けど、1回離れてくれる? お母さんに連絡しないとだから」



今にも泣き出しそうな彼を宥めて、ゆっくり起き上がった。

床に置いたスクールバッグからスマホを取り出し、母親にメッセージを送る。



「終わった?」

「……うん」



スマホをしまうと、振り向く間もなく、お腹に腕が回ってきた。

後ろから抱き寄せられて、再びベッドに沈み込む。



「先生来たら起こして」

「いいけど……見たらビックリされちゃうよ」

「直前で離れれば大丈夫」
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