甘い毒に溺れ堕ちて
藍くんは私を横向きに寝かせると、タオルケットをかぶって背中にしがみついてきた。



「あったかい。ポカポカする」

「急いで来たから……」

「そんなに俺に会いたかったの?」

「ちがっ……心配だったからだよ……っ」



反抗してみせれば、「つまりは図星ってことね」とクスッと笑われた。

うなじに吐息がかかって、こそばゆい感覚に身をよじる。

すると、お腹を包み込む腕に力がこもり……。



「俺、今すっごく幸せ」

「そ、そんなに?」

「誰も来ないと思ってたから。荷物は体育委員のやつが持ってきてくれたけど、すぐ戻っていっちゃったからさ。先生も仕事でずっと静かだったし」



要は構ってもらえて嬉しいらしい。

強く抱きしめられながら発言の意味を理解した上で、ふと気づく。


カーテン1枚で仕切られた、保健室の一角。

シングルサイズのパイプベッドで体を密着させる私たち。


室内には、私と藍くんの2人だけ。



「このまま、時が止まればいいのにな」

「……そうだね」



冷房の意味もなさないくらい、全身が火照るように熱い。

藍くんの熱が伝染ったせいにしたいけど……発熱していないので天気のせいにする。



「なんだか眠くなってきちゃった」

「いいよ。寝てても」



そうだ。これは雨のせい。

湿気と気圧の影響で、上手く頭が働かなくなってしまっているんだ──と。



「おやすみ。藍くん」

「……ん」



お腹に回っている腕に自分の手を重ね、そっと握りしめた。
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