甘い毒に溺れ堕ちて
下校する生徒たちの波に押されながら階段を降り、昇降口にやってきた。

昇降口は案の定ごった返しており、空から降り注ぐ日光も相まって、蒸し暑い空気が充満している。


今日は何度まで上がるんだったっけ。30度は確実に超えるとしても、まだ午前中なのに。

この様子じゃあ、家に着く頃には全身びっしょりだろうな。日焼け止めも塗り直したほうが良さそうだ。


混雑が収まってきたところで靴を履き替え、昇降口を出た。

手で日差しを遮りながら、速歩きで駐輪場に向かう。


いつもなら、ネクタイを緩ませてシャツの第1ボタンを外し、上半身に風を送るのだが……。



「真彩ちゃん」

「ん?」

「今回も勉強教えてくれて、ありがとうございました」



自転車のかごに荷物を入れた後、つむじを見せるように深々とお辞儀をした。



「また最高記録更新するかも」

「手応えあったんだ?」

「うん! なんていうか、脳が覚醒した感じ? 行き詰まることなくスラスラスラ〜って書けてさ。合ってるかどうかはわかんないけど」
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