甘い毒に溺れ堕ちて
「大丈夫。あっち車あるから」

「でも……藍くんも、ずっと捜し回ってたんでしょう……?」



その背中を見ればわかるよ。


自転車をかっ飛ばしてきても息切れなし。

梅雨の時期でもサラサラの髪を維持している。


常に余裕と爽やかさを漂わせている藍くんが、Tシャツに汗じみを作るくらいなんだもん。

事故に遭っていたらどうしよう。悪い人に連れ去られていたらどうしようって、気が気でなかったはず。


なのに……藍くんは、彼女に一言も声をかけず、目すらも合わせなかったのだ。



「せめて顔を見せるくらい……」

「大丈夫だからっ!」



荒らげた声で反抗され、肩をすくませた。

バクバクし始めた心臓を手で押さえながら、こちらに振り向く彼の様子をうかがうと……。



「あの人のことは、彼に任せればいいから」
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