甘い毒に溺れ堕ちて
パチパチパチと盛大な拍手でお祝いする。



「といっても、アイとしての再会なんだけどね」

「なら、また染めるの?」

「いや。1日だけだし、多分ウィッグで対処すると思う。父さんが言うには、最近手芸にハマってるらしくて。面会に行くたびに毛糸をねだられてるみたいなんだよね」



リハビリの一環として始めた編み物に没頭中とのこと。

毛糸を与えた途端、目にも留まらぬ速さで編み始めるから、施設内でちょっとした有名人になっているみたい。



「箱買いはお客さんに迷惑だし、通販だと母さんに負担かけさせちゃうし」

「じゃあ単品で少しずつ買うしかないか」

「そうなんだよー。で、先週とうとう店員さんに顔覚えられちゃってさ」



ドラッグストアに寄るのが減った分、今度は手芸店が行きつけのお店に。

元は数ヶ月に1回だったのが、最近は月に4・5回のペースで訪れているという。


陳列棚を物色し、吟味したのち、両手に抱えてレジに持っていく……想像したらめちゃくちゃ可愛いな。しかも目的がおばあちゃんへのプレゼントなわけでしょ?

祖母思いの毛糸王子、なんて陰で呼ばれてたりして。
< 358 / 374 >

この作品をシェア

pagetop