甘い毒に溺れ堕ちて
口角を緩やかに上げた優しい笑顔。

よそよそしい態度の真相がわかって安心した、というより、まるで最初から全部お見通しだったような口ぶり。



「モーニングコールがなくなったあたりから、なんとなく勘づいてはいたよ」

「そんな前から……」

「最初はちょっと寂しかった。連絡もこっちからしないと来ないし、デートもできないし。でも……」



つないでいた手を離され、両頬を包み込まれる。



「大学に合格したって伝えた時、泣いて喜んでくれたの、すごく嬉しかったよ」

「っ……」

「ずっと俺のことを応援してくれてたんだよね?」

「そうだよ……っ」



当たり前だよ。大切な人の人生を応援しない人がどこにいるの。

教室だったから祝福の言葉だけしか贈れなかったけど……本当は、抱きしめたいくらい感極まってたんだよ。



「ありがとう。俺も好きだよ」

「っ……」

「超が付くほど真面目で、冗談も通じないくらい堅苦しいけど、家族も、友達も、先生も店員さんも、周りの人のことみんなを大切にする優しい真彩ちゃんが、世界で1番大好き」

「らん、く……」



積もりに積もって大きく膨らんでいた想いが、堰を切ったように溢れ出した。

頬を伝う涙を人差し指で拭われると、突然、藍くんが両腕を広げて……。



「約束してたでしょ? どうぞ」

「っ……誰も、いない?」

「いないよ。俺たち、2人だけ」



満面の笑顔でスタンバイする姿に、胸がときめきの音を立てる。

制服の袖で、残った涙を綺麗に拭ってから。



「おいで。真彩ちゃん」

「じゃあ、遠慮なく……っ」



ありったけの愛をぶつけるように思いきり胸に飛び込んだ。
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