甘い毒に溺れ堕ちて
声は抑えつつも、くははっと目を糸のように細めて笑っている。

聞けば、通信制に編入後、新卒でここに就職したらしい。世間狭すぎだろ。



「誰かに会いに来たの?」

「ばあちゃんに。今日面会なんだ」

「もしかして、華子さん?」

「知ってんの?」

「知ってるよ。めちゃくちゃ有名人だし。ここだけの話、職員の間では、編み物の魔術師って呼ばれてるからな」



元同級生のよしみでマル秘情報を教えてもらった。


現役を引退してもなお、新たな称号を得ているとは……。

趣味も極めると一種の才能になるものなんだな。


すると、武藤の持つ携帯電話がプルルルルとけたたましく鳴った。

素早く手に取り、「はいっ。こちらデイケアの武藤です」ととっさに声色を変えて対応している。


さすがは元優等生。けっこうサマになってるじゃん。



「わりぃ。もう行かなきゃ」

「ん。頑張れよ。思い詰めすぎて道を踏み外さない程度にな」

「はいはい。余計なお世話だよ」
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