社会不適合者
3人に連れて来られたのは、校舎裏。

自己紹介は自分のことで頭がいっぱいだったから、まだ誰の名前も覚えていない。

『…ごめんね、折角早く帰れるのに呼び出しちゃって…!』

そう言って謝る子は、長い髪をポニーテールに結んでいる頭の良さそうな子。

「ううん!…気にしないで………!」

『ちょっと松原さんとお話したくてさ〜?』

そう言った子は、活発そうなショートヘアがよく似合う、スポーツが得意そうな子。

「…うっ、うん!」

『じゃあ、ここは彩歌が適任でしょ(笑)』

笑いながらそう話すのは、サイドテールのいかにもモテそうな可愛い子。

…?

彩歌…あっ。

ネームプレートがある。

ポニーテールの子は…渋谷彩歌《しぶやあやか》、彩歌ってこの人か…。

ショートヘアの子は、結城雫《ゆうきしずく》、サイドテールの子は胡桃沢華《くるみざわはな》。

ネームプレートがあってよかった…。
私は安堵した。

でも、その安堵感は一気に吹き飛んだ。

『……松原さ、なんで星彩中来た?』

「………えっ…?渋谷さん…?」

『なんで来たって聞いてんだよ!』

‘ガシャン’
とフェンスに追いやられた。
逃げられない。

「なんでって………。」

その時、胡桃沢さんがニヤニヤしながらこう言った。

『華、知ってるんだ〜。…アンタって、綾瀬里桜の“友達”だったんでしょ(笑)』

「!」

なんで知ってるの…?

去年の夏休みに会って、すぐに別れた期間限定の友達だったのに。里桜ちゃんはいじめられてるって言ってたから、誰かに私のことを話すなんてのは考えられなかった。

『黙ってないで何か言ってみたら?』

東小は、この地域で1番児童の数が多い。
星彩中には、2番目に児童数が多い南小の生徒も来る。きっとこの3人が里桜ちゃんの存在を知っているのは、東小出身ということだろう。

「えっ………。」

『何か言えっつってんだろ!』

「きゃっ………………!」

……お腹を蹴られた。凄く痛い…。

『松原〜!お前ふざけんなよ!』
『いいぞっ彩歌〜、もっと殴っちゃえっ!』

「った………。ごめ…なさい…渋谷さ…。」

『あ?聞こえねーんだっつーの!』
『ほら〜彩歌めっちゃ激おこじゃんか(笑)、何とか言えよ松原ぁ〜!』

「……っ…、痛いっ…。ごめんなさい…ごめん…なさい……、渋谷さん…。」

ずっと殴られ続けた。
痛い、痛い、痛い痛い痛い。

_もう、今日で終わり。_

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この日から、私は中学校に通ってない。
初日で挫折した。
この事を里桜ちゃんに打ち明けたら、何て言うかな。呆れるかな。…やっぱり、軽蔑するかな。
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