社会不適合者
「……………………花奏…。」

「…?!……………お母さん………!」

しまった。
母が帰ってるのに気付かなかった。
聞かれたかもしれない。

…誤魔化さなきゃ。


「……お帰り…。…………早かったね。」

「うん、予定より早く終わったから…。」

「「…………………………………」」

互いの沈黙が流れる。

「…花奏……今、何か言ってた…?」

「……………………………何も。」

「嘘…!ねぇ花奏、お願い。嘘は…やめてね…。」

「…嘘なんかついてない……。」

「だってほら…花奏、泣いてるでしょ?…私心配なんだよ……花奏のことが…」

「自分の子供なんだから心配するのなんて当たり前じゃん!」

「……………花奏…。」

「……なんで…私なんか産んだの…。」

私は初めて、お母さんに怒鳴った。
反論したのも初めてだった。

「………花奏っ…。」

私は2階に駆け上がった。
…ううん、違う。

逃げたんだ。


お母さんから

現実から

逃げてしまってた。



病んでることは、お母さんには悟られないようにしてた。
本当は、リストカットだってしてるんだよ?
常にパーカーを着て、手首を見られないように気を付けてた。

でも。

『じゃあ、死のうかな。』


聞かれてしまった…?

もう手遅れすぎる。


…………………。


私はベットに突っ伏した。

声を我慢して。

声を押し殺して。

この感情も一緒に殺してしまいたいくらいに



今は泣くことしかできない。
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