ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
琴羽ちゃんのママの目指した夢の話は、マナの心をつかんだようだ。ほんのわずか、その目に力が戻る。だけど、すぐに小さく首を横に振って目を伏せた。

「先生がやり残した夢を叶える?私にそんなことが出来るわけがない」

「出来る出来ない、じゃなくて、やるんだ。マナならやれるよ。どんなにツイてなくて困難な状況になっても、いつでも前向きで笑顔で乗り切れるマナなら、琴羽ちゃんのママのような医師にきっとなれる。多くの人を救えるよ」

マナは、そっと膝の上の僕の手に自分の手を重ねた。ひどく冷たいその手は、それでも僕の手をぎゅっと包んでくれる。

そのまま、静かに時が過ぎた。

マナの手に少しずつ温かさが戻っていく。
再び彼女が伏せた顔を上げた。その顔には、いつもの輝くようなキラメキが戻っている。
あぁ、いつものマナが戻ってきた。彼女なりに琴羽ちゃんのママの死を受け入れ、前を向けたんだと確信した。

「それって、ホロ・イ・ムアだね。
…私、先生の思いをつなぎたい。ね、その『まこと記念病院』は、いつ出来るの?」

「まだまだ、夢は遠いよ。でも少しずつ着実に形になっていってる」

「そう。小児科もある?」

「もちろん」

「私、絶対そこで働きたい!」

「ぜひ、お招きしたいね。小児科のエースとして。出来ればそのころは、『丹下真菜先生』になっていてほしいところだけど」


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