リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
『貧民街の子達は明日食べる物さえ無い日々を送っているのにか?』

『そうだ。 もしも次の日、その兄妹が空腹で天に召されたとしてもだ。 一時でも彼らが幸せを感じられたなら、きっと俺は自らのやるべき事を知るはずだ』

『それはただの自己満足ではないのか?』

『国を統べる人間というのはいくらでも残酷になれる生き物なんだよ。 まるで救いの神のような顔をしつつ死神でもある。 そして罪悪感を感じてはならない』

『それが次期国王の君の考えなのか?』

『おとぎ話ではないんだ。 だからこの世は本当に面倒くさい』

 そしてジェイは俺に握手を求めて来た。
 差し出された手を握ると、彼はその手を引いて俺の耳元で囁いた。

『ロナウドには本当に感謝しているよ。 妹嬢に心を移してくれて。 おかげでリリィの愛を手に入れられた』

『ジェイ……君は』

『知っているかな? 国王というのはね、欲しい物があったらどんな手段を使っても裏切ってでも手に入れようとするものなんだ。 それが友人でもね。 だからさ、君や使用人達にはお礼を言わなければならない。 俺を蔑んだ目で見てくれてありがとう、とね』
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